ゲノム情報科学研究教育機構  アブストラクト
Date March 1, 2011
Speaker Dr. 伊藤真純, 北海道大学情報科学研究科
Title 木構造を利用したアノテーション手法
Abstract ゲノム配列決定が低コストで短期間で可能になった現在、生命現象の解析において、計算機による遺伝子の機能推定は最も重要なプロセスとなっている。計算機による大規模な機能予測では、配列相同性を指標として他の生物種の持つ機能が解析された遺伝子とのオーソログ関係を推定することが非常に有効であることが知られている。しかしながら、この手法は機能推定の対象となる遺伝子が、種特異的な重複によって生じたパラログである場合や、オーソログ自体の機能が未知である場合などには適用できない。現在、年間に数百生物種のゲノムが決定されており、機能解析されたオーソログ遺伝子を持たない新規遺伝子のデータが今後増大すると考えられ、オーソログ関係の推定に基づく機能推定は困難になりつつある。一方、近年、これまでに解析されてきた遺伝子の機能は整理され、機能分類のデータベースとして整備されつつある。類似する機能を持つパラログ遺伝子は遺伝子ファミリーを形成し、系統関係と機能の類似性に基づいて階層的に分類される。この遺伝子機能の細分化は配列の進化過程と密接に関わっていると考えられるため、機能分類の階層性はファミリー内の遺伝子の系統関係と相関があると推測される。 本研究では、この点に着目し、木構造アライメントアルゴリズムによる遺伝子の大規模・網羅的な自動アノテーション手法の開発を行った。本手法では、機能に基づく遺伝子の階層分類と、遺伝子の系統関係のそれぞれを表す木構造をアライメントすることで、1) 既知の遺伝子群の機能分類に、新規遺伝子を効率的に位置づけることで精度の高いアノテーションを行い、2) 系統関係の中間ノードに対して機能アノテーションを付加することで遺伝子アノテーションの網羅性を引き上げ、3)既知の機能と類縁関係を持つ未知の分類群を発見することが可能になると考えられる。
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