京都大学薬学部における学部教育は,平成5年の旧教養部廃止や平成9年の大学院重点化などの組織改革を機会にして、
基礎薬学から医療薬学までを広く網羅する知識・技能・態度の体系的教育を目指して改変を重ねながら現状に至っている。しかし現在では、
薬学部6年制への移行や日本薬学会による薬学教育モデル・コアカリキュラムを巡って、さらに大きな変革期に突入しようという段階に
あるように思われる。
今回、21世紀COEプログラムによって「バイオインフォマティクス」を薬学部の教育に導入する案を作成するにあたっては、未来の 研究者養成を目指した先進的な教育を全国の薬学部に先駆けて学部教育の可能な限り早期に導入し、単に学生の選択肢を増やすだけでなく、
俗に言う「wet」ラボでのスキル教育を中心にした薬学教育に新しい情報科学の「dry」な風を送り込んでそれらの知を融合させることを意図した。
幸いにもCOE事業推進担当者の先生や研究員の方々だけでなく、薬学部に新設された寄附講座の先生方などからも広くご協力を得て、 平成16年度からスタートを切ることになった。
初年度のプランは表に示したように、薬学教育の年次進行に応じて得られる知識や技能を考慮したものである。主なバイオインフォマティクス 関連科目は次のように配置したが、これら内容については成績やアンケートなどを元にして、今後も継続的に改良したいと考えている。
- 基礎情報処理および同演習(全学共通科目、2年前期)
従来のコンピュータリテラシー教育から深めて、バイオインフォマティクスの理解に 必要な知識と技能を身につけさせる。
- 基礎バイオインフォマティクス(新設、2年後期)
生物学や薬学におけるバイオインフォマティクスの現状や 可能性とその基本的な仕組みに ついて、12名の講師陣のリレー講義によって広く学習する。
- 学生実習(3年通年)の一部
COE関連教員が担当する実習項目において、アレイ解析、遺伝子塩基配列解析、データベース操作、統計解析などを 体得する。
- 応用バイオインフォマティクス(新設、4年前期)
COE研究員を中心とした講師陣が提示する課題について、個々の学生が端末を操作しつつ 解決への道筋を体得する。